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「包装材のリサイクル可能率と再生素材含有率を証明してください」——欧州ブランドからのメールに、従業員75名の化粧品OEM工場はどう答えるか

EU包装・包装廃棄物規則(PPWR)が化粧品OEMに要求するリサイクル可能率・再生素材含有率の証明義務を解説。ポンプ・ディスペンサー等の複合素材リスクと対応策。

#PPWR#EU包装規則#リサイクル可能率#再生素材含有率

EU包装規則——化粧品OEMに届いたリサイクル可能率の証明要求

導入——ある朝、受信トレイに届いた英語のメール

従業員75名の化粧品OEM工場。フランスのスキンケアブランドからプライベートブランド製品の製造を受託して8年目になる。品質も納期も安定している。しかし、ある朝届いたメールの件名を見て、包装資材の調達担当者は手が止まった。

「Please provide recyclability assessment and post-consumer recycled content percentage for all packaging components including pump, cap, bottle, and carton.」

——包装部品ごとのリサイクル可能率と、使用済み再生素材の含有率を証明してほしい。ポンプ、キャップ、ボトル、カートンすべてについて。

「リサイクル可能率」も「再生素材含有率」も、これまでの包装仕様書には存在しなかった項目だ。担当者は翻訳ツールを開きながら、知らない用語の嵐に直面する。この要求の背景にあるのが、EUのPPWR(包装・包装廃棄物規則) という新しい法規制である。

PPWRとは何か——30年ぶりの包装規制の大転換

PPWR(Regulation (EU) 2025/40) は、EUが2025年2月に施行した包装に関する新しい規則だ。1994年に制定された旧「包装指令(Packaging Directive 94/62/EC)」を全面的に置き換えるもので、2026年8月12日から本格適用が始まる。

PPWR(EU包装・包装廃棄物規則)は2025年2月11日に発効し、18カ月の移行期間を経て2026年8月12日から適用開始となる。 EUR-Lex — Packaging and packaging waste (from 2026)

要するに、「EU市場で売られるすべての包装」に対して、これまでにない厳しい環境要件を課す法律だ。化粧品、食品、電子機器——業種を問わない。4つの柱がある。

柱1:再生素材含有率(Recycled Content)。 プラスチック包装に、一定割合の使用済み再生素材(PCR = Post-Consumer Recycled material)を含むことを義務化する。2030年から段階適用が始まり、2040年にはさらに高い目標が設定される。

柱2:リサイクル可能率(Recyclability)。 すべての包装にA〜Eの5段階のリサイクル可能性グレードが付与される。2030年以降、グレードC以上でなければEU市場で販売できない。2038年にはグレードB以上に引き上げられる。

柱3:包装削減・再利用目標。 過剰包装の禁止(空間率40%以下の義務化)、一部の使い捨てプラスチック包装の市場投入禁止(2030年〜)。

柱4:ラベリングとデジタル製品パスポート。 2028年までに素材識別のピクトグラムラベルを義務化。さらにQRコード等のデジタル識別子により、素材構成・リサイクル可能性・回収方法を消費者が確認できるようにする。

旧指令が「目標を設定して各国に任せる」アプローチだったのに対し、PPWRはEU全域で統一適用される規則(Regulation) だ。加盟国ごとのバラつきがなくなる分、義務の逃げ場もなくなる。

化粧品包装のリスクマップ——ポンプとディスペンサーが最大の難所

化粧品包装は、PPWRにおいて最もリスクの高い製品カテゴリのひとつだ。理由は単純で、異なる素材を組み合わせた複合構造(マルチマテリアル)が多いからである。

化粧品包装はしばしば複数の素材を組み合わせている——プラスチックボトルに金属ポンプ、複合カートン、混合素材のアプリケーターなど。この複合素材構成がPPWRのリサイクル可能性要件において重大な課題を生む。 GCRS — PPWR Packaging Compliance for Beauty Brands

では、化粧品の包装部品ごとにリスクを整理しよう。

包装部品主な素材リサイクル可能性リスク再生素材含有率の課題
ボトル・ジャーPET / PP / ガラス着色PETやコーティング処理が選別を阻害。ガラスは比較的容易接触感受性包装としてPETは30%、その他プラは10%(2030年目標)
チューブPE / 複合ラミネート単層PEは可能。アルミラミネートは分離不能でグレードD以下ラミネート構造ではPCR混入が困難
ポンプ・ディスペンサーPP + 金属スプリング + シリコンガスケット最大リスク。 異素材が分離不能。金属スプリングが自動選別を阻害複合部品のためPCR含有率の計算自体が困難
キャップ・クロージャーPP / ABS単素材なら中リスク。メタリック塗装はリサイクル阻害PP用の食品グレードPCRは供給逼迫
外箱(カートン)板紙 / 段ボール低リスク。 紙リサイクルインフラは成熟古紙含有率は既に高水準
シュリンクフィルムPE / PVCPVCは実質的に不可。PEは単層なら可能薄膜フィルムへのPCR混入は技術的に進展中

最大の難所はポンプとディスペンサーだ。従来のポンプには金属スプリングが内蔵されており、プラスチックと金属が一体化した構造を消費者が分離することは不可能に近い。PPWRのリサイクル可能性評価では、モノマテリアル(単一素材)設計が高グレード取得の最も確実な方法とされている。すでに全PP・全PEのオールプラスチックポンプが市場に出始めているが、OEM工場として切り替えコストと納期への影響を評価する必要がある。

モノマテリアル包装——ボトル、クロージャー、ポンプ、構造部品をすべて同一ポリマーで構成する設計——が、高いリサイクル可能性グレード取得への最も確実な道筋である。 Othila Pak — EU PPWR and Cosmetic Plastic Packaging

OEM工場に要求が届く構造——義務はブランドに、データ収集はOEMに

ここが重要な点だ。PPWRの法的義務は、EU市場に製品を投入する事業者(=ブランド) に課される。日本のOEM工場がPPWRの直接的な名宛人になるわけではない。

しかし現実には、ブランドが義務を果たすためには、OEM工場からのデータが不可欠だ。ブランドはポンプの金属スプリングの素材名を知らない。ボトルのPET樹脂がどの再生素材業者から来ているか知らない。知っているのは、実際に包装材を調達し、組み立てているOEM工場だけだ。

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つまり、データのカスケード(連鎖的な要求の流れ) が発生する。EU当局 → ブランド → OEM工場 → 各包装部品サプライヤー。OEM工場は、この連鎖の中間地点に立たされる。ブランドに提出しなければならないデータは、おおむね以下の4種類だ。

1. 素材構成データ(Material Composition)。 包装部品ごとに、使用されている素材の種類と重量比率。ポンプであればPP樹脂・金属スプリング・シリコンガスケットそれぞれの重量。

2. 再生素材含有率(PCR Content %)。 各プラスチック部品に含まれるポストコンシューマーリサイクル素材の割合。接触感受性包装(化粧品の中身に直接触れるもの)は、2030年にPETで30%、その他プラスチックで10% が最低基準となる。

2030年の最低再生素材含有率:PET接触感受性包装は30%、PET以外の接触感受性プラスチック包装は10%。2040年にはそれぞれ50%、25%に引き上げ。 Fieldfisher — 10 key things every global business should know

3. リサイクル可能性評価(Recyclability Assessment)。 部品ごとにA〜Eのグレードを判定するための設計情報——素材分離の可否、着色方法、コーティングの有無。

4. 重量データ(Weight Ratio)。 製品に対する包装の重量比率。過剰包装の禁止規定に対応するために必要だ。

手作業 vs 構造的解決——15社のサプライヤーからExcelで集める限界

従業員75名の化粧品OEM工場が、この4種類のデータをどう集めるか。現状、多くの工場がこうしている。

現状の手作業フロー。 包装部品のサプライヤーは15社以上。ポンプメーカー、ボトルメーカー、チューブメーカー、インキメーカー、フィルムメーカー——それぞれに電話やメールで素材仕様書を要求する。返ってくるフォーマットはバラバラだ。あるメーカーはPDF、あるメーカーはExcel、あるメーカーは「口頭で」回答してくる。

担当者はこれらを手作業でひとつのExcelに転記し、部品ごとの再生素材含有率を手計算する。ポンプの総重量が12gで、PP樹脂部分が8g、うちPCR含有率が15% であれば、ポンプ全体のPCR含有率は**(8g x 15%) / 12g = 10%** ——こうした計算を数十部品にわたって繰り返す。

しかも、この作業は一度で終わらない。ブランドの要求フォーマットが変われば再計算。サプライヤーが素材を変更すれば再調査。PPWRの目標値が段階的に引き上げられるたび、すべての製品ラインについてデータを更新しなければならない。

構造的な解決アプローチ。 この問題の本質は、「15社のサプライヤーから届くバラバラの形式の素材証明書を、ひとつの整合性のあるデータベースに統合すること」だ。つまり、自動化が効く構造をしている。

サプライヤーが発行する素材証明書(Material Certificate)や安全データシート(SDS)をクラウドに取り込み、AIが素材名・含有率・重量などの数値データを自動抽出する。抽出されたデータは、PPWR・CSRD・CBAMなど複数の規制フレームワークに対して同時にマッピングされる。ブランドからどんなフォーマットで要求が来ても、同じデータソースから出力を生成できる。

手作業のExcelでは1製品あたり3〜5営業日かかっていたデータ集約が、構造化されたシステムでは素材証明書のアップロード後、数分で完了する。15社分のデータを手で突き合わせる作業が、アップロードという1アクションに置き換わる。

まとめ——PPWRは包装の「成分表示」を要求している

PPWRは、食品業界における栄養成分表示と同じことを、すべての包装に対して要求している。「この包装は何でできているか」「どれだけリサイクルできるか」「再生素材がどれだけ入っているか」——これらを定量的に証明しなければ、EU市場に製品を出せなくなる。

30年ぶりの包装規制の大転換であり、化粧品OEMにとっては特に厳しい。ポンプやディスペンサーのモノマテリアル化、接触感受性包装のPCR調達、部品ごとのリサイクル可能性評価——どれも一朝一夕では対応できない。しかし、逆に言えば、今から包装データの構造化に取り組んだOEM工場は、欧州ブランドにとって「替えの利かないパートナー」になれる。

Marupassは、サプライヤーから届く素材証明書のAI自動抽出、複数フレームワークへの同時マッピング、監査証跡の自動記録を通じて、この包装データ管理の構造化を支援するプラットフォームだ。まずは1製品の包装部品データから、試してみてほしい。


稟議用FAQ

想定質問回答
PPWRとは何ですか?EU包装・包装廃棄物規則(Regulation (EU) 2025/40)。1994年の旧包装指令を全面刷新し、2026年8月から適用開始。EU市場に出るすべての包装にリサイクル可能性・再生素材含有率・ラベリング等を義務化する
日本の化粧品OEMにも適用されるのですか?法的義務はEU市場に製品を投入するブランドに課される。しかしブランドが義務を果たすためにOEMからの素材データが必要なため、事実上、OEM工場にもデータ提出義務が発生する
いつまでに対応が必要ですか?2026年8月:基本要件の適用開始。2028年:ラベリング義務化。2030年:リサイクル可能性グレードC以上の義務化、再生素材含有率の最低基準適用(PET接触包装30%、その他プラ接触包装10%)。2040年:目標値引き上げ(PET 50%、その他25%)
ポンプやディスペンサーはどうなりますか?金属スプリング+プラスチック+シリコンの複合構造はリサイクル可能性グレードが低くなる。全PP・全PEのオールプラスチックポンプへの切り替えが業界の方向性。サプライヤーとの早期協議が必要
対応にはどのくらいのコストがかかりますか?モノマテリアルポンプへの切り替え、PCR樹脂の調達コスト増、素材データ管理体制の構築が主な投資項目。ただし対応しなかった場合のリスク(欧州ブランドとの取引停止)のほうが大きい
他のESG規制との関係は?PPWRはCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やCBAM(炭素国境調整メカニズム)と並ぶEUグリーンディール政策の一環。包装データの構造化は、CSRD報告のバリューチェーン開示にもそのまま活用できる
Marupassで何ができますか?サプライヤーの素材証明書をアップロードすると、AIが素材構成・含有率・重量を自動抽出。PPWR・CSRD・CBAMなど複数規制へ同時マッピングし、監査証跡付きで出力する。ゼロから仕組みを作る必要がない
まず何から始めればよいですか?1つの製品の包装部品リストを作成し、各部品の素材仕様書をサプライヤーから取り寄せること。このデータが揃えば、システムによる自動化に移行できる。Marupassでは無料トライアルでこのプロセスを体験できる

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